糖尿病の合併症予防のための、HbA1cの新目標値が導入開始。HbA1cと血糖値の関係とは?
糖尿病合併症予防のための新目標値導入
糖尿病は、一度発病してしまうと、
完治することはほぼ期待できず、
一生上手に付き合っていく必要がある病気です。
上手にコントロールできれば、健康な人とそれほど
変わらない生活をすることができますし、
死に直結することはありません。
でも、コントロール不良の場合は、腎臓や目、
末梢の動脈に重大な合併症を起こし、
腎不全になって血液透析が必要となったり、
失明や下肢の切断などを余儀なくされることもある
恐ろしい病気です。
日本糖尿病学会は、糖尿病の合併症予防のための
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の新目標値を定め、
2013年の6月から運用を始めました。
①HbA1c=6.0%未満 血糖正常化を目指す際の目標
②HbA1c=7.0%未満 合併症予防のための目標
③HbA1c=8.0%未満 治療強化が困難な際の目標
この新目標値は、従来のものと比べて、
3段階にわかりやすくまとまっていることが特徴です。
HbA1cって何?
以前は、糖尿病の診断基準というと「血糖値」でしたよね。
空腹時血糖値が70~110mg/dlだと
正常と判断されていました。
でも、最近はこの血糖値に変わり、
HbA1cが糖尿病の診断基準になっています。
HbA1cとは、赤血球に含まれる
ヘモグロビンに血液中の糖が結合したもので、
過去1~2ヶ月間の平均血糖値を反映する値です。
血糖値からHbA1cが糖尿病診断の主流になった理由は、
HbA1cは「過去1~2ヶ月間の平均」を
知ることができるためです。
血糖値は、食前食後で大きく変動しますし、
検査の数日前から節制した食事をしたり、
断食をしていたら、血糖値は低くなり、
きちんと診断できず、
糖尿病を見逃してしまうこともあるのです。
そのため、糖尿病診断には血糖値ではなく
HbA1cが使われるようになりました。
もちろん、HbA1cだけが使われるのではなく、
診断するときには血糖値も考慮されますし、
日常の血糖コントロールには、
血糖値が重要な指標になっています。
HbA1cから血糖値を知る方法
HbA1cが過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映している
といっても、実際の血糖値も知りたいですよね。
アメリカの糖尿病協会は、
HbA1cから過去1~2ヶ月の血糖値を推定できる
換算式を発表しています。
過去1~2ヶ月の推定平均血糖値(mg/dl)
=28.7×HbA1c(%)-46.7
上記の換算式で、
過去の平均血糖値を知ることができます。
もし、HbA1cが6.5%の場合は、
28.7×6.5-46.7=139.85となりますので、
過去1~2ヶ月の平均血糖値は約140mg/dlと
推定できます。
上記の糖尿病学会が発表した新目標値では、
HbA1c=6.5%は「血糖正常化を目指す際の目標」を
達成できておらず、血糖コントロールが必要な値です。
換算式から見ても、平均血糖値が140mg/dlは、
空腹時血糖値の正常値が70~110mg/dlですので、
やはり高いですよね。
血糖コントロールの方法は、
医師と相談しながら行う必要がありますが、
自分でもHbA1cと推定血糖値を知っておくことで、
糖尿病予防への意識も高まり、
自然と食事の節制や運動習慣をつけるなどの
予防法実践へのモチベーションとなるでしょう。