角膜移植の現状と新たな治療法や、アイバンクについて知りましょう。
角膜の働きと病気
角膜は目の組織の一部で、
目の表面を覆っている透明な膜のことです。
角膜は光を屈曲させて、
目の組織の奥にある網膜に焦点を結ぶ働きがあり、
「物を見る」ことには欠かすことのできない
重要な器官です。
この角膜が何らかの病気になり、炎症などを起こすと、
角膜は白く濁ってしまいます。
目の表面を覆う透明な角膜が濁ってしまえば、
当然ながら視力は低下しますよね。
角膜の病気には、角膜ヘルペスや細菌性角膜感染症、
水疱性角膜症、円錐角膜、角膜変性症、
雪山や溶接作業での過度の光が当たることによる
熱傷や化学傷などがあります。
最近、急増してるのがコンタクトレンズを
不適切に使用したことによる感染症です。
コンタクトレンズは、
正しく使用していれば安全なものですが、
決められた装着時間を守らない、
洗浄・消毒が不十分などの場合、
角膜が感染症を起こしてしまいます。
コンタクトレンズの不適切使用による
重度の視力障害を起こすケースは、
年間で数百例にも及ぶと言われています。
角膜移植の流れ
角膜は基本的に再生しない組織です。
一度角膜が濁ってしまうと、
治療を施してもなかなか回復しません。
その場合、視力を取り戻すためには、
角膜移植をするしかありません。
角膜移植は、
亡くなった方の健康な角膜を移植するものです。
角膜移植の流れとしては、
医師が角膜移植が必要という診断をした後、
アイバンクのコーディネーターと面接をし、
提供者が現れるまで待機となり、
提供者が現れたら緊急手術で角膜移植を行います。
角膜移植は、ほかの臓器とは異なり「脳死」状態ではなく、
「心停止」の状態から角膜を提供(献眼)できますので、
臓器移植の中では比較的手術件数が多くなっています。
しかし、角膜移植を待つ人は、
日本で5000人から10000人いると言われていますが、
現在角膜移植手術を受ける人は年間で数百人しかおらず、
ドナーが圧倒的に足りない状況です。
もし、死後に角膜提供をしても良いという人は、
アイバンクに登録しておくと、
スムーズに角膜移植が行われますので、
「興味がある」、「前向きに考えてみたい」という人も、
一度アイバンクに連絡してみると良いでしょう。
角膜移植に変わる治療法
現在、角膜が濁り変性してしまった場合、
視力を取り戻すには角膜移植しか方法がありませんが、
角膜移植に変わる新たな治療法が
確立されるかもしれません。
新たな治療法は角膜の病気の中でも
水疱性角膜症に限られたものですが、
京都府立医科大学の眼科学の研究グループによると、
水疱性角膜症の患者の目に
他人の角膜内皮細胞を培養したものを注入して、
視力を回復させるというものです。
現在のところ、この治療を行った3人の患者は
視力が回復しているという結果が出ています。
この「他人の角膜内皮細胞」は、
薬剤を用いてシャーレで培養・増殖可能ですので、
角膜移植よりもドナーの数は少なくて済みますし、
移植よりも手術時間が短いため、
患者の負担も少ないというメリットがあります。
この治療法が確立されれば、
角膜移植をせずに視力回復できる人が増え、
その分角膜移植の順番待ちをする人も減りますので、
視力回復を待つ人にとっては大きな光となるでしょう。