国境なき医師団が「制御不能」と発表。ギニアのエボラ出血熱の最新動向を知りましょう。
エボラ出血熱が制御不能
2014年3月に西アフリカのギニアで確認されたエボラ出血熱は、
3ヶ月以上たった現在でも流行が終息する気配を見せず、
拡大し続けていて、世界保健機関(WHO)の最新の統計によると、
6月24日時点で患者は567人、死者は350人に上り、
過去最大規模の流行となっています。
最前線で治療に当たっている国境なき医師団は、
「流行が前例のない勢いで広がり、
制御できない状況に陥った。」と発表しています。
国境なき医師団は、
300人以上の人員派遣と
40トン以上の物資供給を行ってきましたが、
このような対策も限界に達し、
「もはや新たな流行が発生した場所にチームを送れなくなった。」
と述べていて、これ以上の流行を食い止めるためには、
国境なき医師団だけでなく地元政府や
支援団体等の大規模な協力が必要だと呼びかけています。
なぜ流行が終息しないのか?
1976年に初めてエボラ出血熱が発見されて以降、
アフリカ中央部や西アフリカで
度々流行し死者を出してきましたが、
流行はすぐに終息しましたし、
感染経路が判明し有効な対策が取られるようになってからは、
大規模な流行はありませんでした。
しかし、今回のギニア・リベリア・シエラリオネで
発生しているエボラ出血熱は、
3ヶ月たっても終息することなく、
死者どんどん増加しています。
なぜ、今回の流行は終息する様子を見せないのでしょう?
流行が終息せず拡大を続ける理由は、
現時点で2つ考えられます。
1つ目は、致死率が今までよりも低いことです。
エボラ出血熱の致死率は大体70%以上で、
高い場合は90%にも及びますが、
今回のギニア周辺で猛威を振るっている
エボラ出血熱の致死率は約60%にとどまっています。
致死率が低いことは良いことなのですが、
今までは致死率が高く、
急激に重症化し短期間で死亡していたため、
感染者がほかの人に感染させる期間が短く、
感染が広がる前に流行が終息していました。
しかし、今回は致死率が60%低く、
感染者がほかの人に感染させる期間が長いため、
感染が拡大していったと考えられます。
もう1つは、
最初にギニアでエボラ出血熱が確認された場所が、
ギニアの首都コナクリに近い場所だったことです。
今までは、都市部から離れた
人口が少ない場所で発生していましたが、
今回は国際空港があり、人口の多い首都近くで発生したため、
流行が拡大していると見られています。
パンデミックになる可能性は?
感染症の流行規模には、
エンデミック、エピデミック、パンデミックと
3段階に分けられます。
パンデミックは、世界的流行を表します。
現在のエボラ出血熱はエピデミックの段階ですが、
治療に当たっている国境なき医師団が
「制御不能」との声明を発表していますので、
パンデミックに突入する可能性は十分にあります。
またWHOのインフルエンザの
パンデミックフェーズ(6段階に分類)に
照らし合わせてみても、
現時点でフェーズ5まできている状態です。
さらに現在はブラジルで
サッカーのワールドカップが開かれていて、
世界各国から旅行客が1ヶ所に集まっている時期であり、
ギニアと国境を接しているコートジボワールも参加していますし、
そのほか西アフリカ諸国からも
ブラジルに行っている人いるでしょう。
エボラ出血熱の潜伏期間は2~21日と長いですので、
感染後に気づかず渡航して、渡航先で発症したけど、
エボラ出血熱と思わずに対策が遅れ、
一気に感染が広がることも十分に考えられます。
今私たちにできることは、とにかく最新の情報を入手し、
パンデミックに移行する可能性があることを
知っておくことです。
今後も、流行の終息宣言が出るまで、
このエボラ出血熱の動向に注意を払っていきましょう。