注目を集める乳がん治療。乳がんの4つの種類と、予防法を知っておきましょう。
乳がんリスクの高い女性には予防薬投与?
アメリカのハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーさんが
遺伝子異常のため乳がんになる確率が非常に高く、
予防的に乳房切除術と再建術を受けたニュースは、
日本でも大きく取り上げられました。
このことで、乳がんには遺伝子異常や家族歴が
関わっているタイプがあることが、
広く認識されるようになり、注目を集めています。
このような中、イギリスの国立最適医療研究所は、
イギリス国内の乳がんの発症リスクの高い女性は、
発症リスクを低下させる可能性のある薬剤投与を
受けるべきだとの新指針を発表しています。
この新指針は、タモキシフェン(発症リスク約50%減)
またはラロキシフェン(発症リスク38%減)
という薬剤を予防的に5年間投与するものです。
この予防的薬剤投与は、5年間で約18000円前後と費用が安く
新指針の策定に関わったガレス・エバンズ教授は、
「費用対効果が非常に高い」としています。
日本では、まだ予防的な乳房切除術や
予防的薬剤投与は承認されていませんが、
世界的に乳がん予防のための治療が進めば、
日本でも乳がん発症リスクの高い女性に対して、
何らかの予防的治療が始まる可能性があります。
乳がんの種類と治療法
乳がんは、分子サブタイプによって、
4つのタイプに分けることができます。
それぞれのタイプによって、治療法も異なってきますので、
ご紹介します。
①ルミナルA型
ルミナルA型は、乳がんの進行スピードが遅く、
比較的予後が良いタイプです。
手術後に抗がん剤を必要としないことが多く、
ホルモン療法によって、がん細胞の増殖を抑えることができ
術後にホルモン療法を実施すると、
転移や再発の確率が約50%低下することがわかっています。
②ルミナルB型
ルミナルA型よりも、
進行スピードが速いタイプがルミナルB型です。
進行スピードが速い分、A型よりも予後が悪く、
術後の抗がん剤治療は欠かせません。
③HER2陽性型
HER2陽性型は、従来最も予後が悪く、
悪性度が高い乳がんでしたが、
医療の発達によりHER2陽性型の悪性腫瘍を
ターゲットにする治療薬
(トラスツズマブ=薬品名ハーセプチン)が開発された
ことにより、治療成績が大幅に上昇しています。
④トリプルネガティブ
遺伝子異常の乳がんは、
このトリプルネガティブのタイプが多いのですが、
これは抗がん剤やホルモン療法の効果が薄く、
現在のところ有効な治療法は手術による
全摘出のみとなっています。
乳がん検診と自己チェック法
現在、日本では乳がんの予防的な手術や薬剤投与は
行われていませんので、
早期発見・早期治療が非常に重要になっています。
乳がんを早期発見するためには、
乳がん検診が欠かせません。
現在、自治体が行っている乳がん検診は40歳以上が
対象となっています。
なぜ、20~30代は乳がん検診を受けないのでしょう?
それは、20~30代の若い世代では、
乳がん発症のリスクが低く、偽陽性や過剰診断による
リスクのほうが大きいという見解があるからです。
しかし、20~30代の乳がん発症リスクはゼロではありませんし
特に乳がんの家族歴のある女性は、
まだ若いからといって安心していることは危険です。
若い世代の人は、
乳がんの自己検診を月に1回行ってみましょう。
自己検診は、自分で乳房を触り、
シコリがないかチェックするだけですので、簡単に行えます。
さらに、家族歴のある人は、年に1回自己負担で、
マンモグラフィーの検査を受けると良いでしょう。