死亡例もあるセレウス菌の食中毒。調理済み食品の常温での保存には要注意
病院食が原因?院内感染で死亡者も
セレウス菌、という、あまり聞きなれない菌による
院内感染が発生しました。
国立がん研究センター中央病院に入院中の
ガン患者13名が感染し、
うち2名が死亡したというものです
(2013年8月22日現在)。
土の中やほこりなど、
自然環境に存在する細菌であるセレウス菌は、
農作物にも多く見られ、
米・小麦などを使用した料理がこの菌による
食中毒の原因となりやすいとされます。
今回、まだ感染経路は明らかにされていませんが、
病院食を通じての感染も考えられます。
加熱に強いのが特徴
過去にも、
セレウス菌による集団食中毒が起こっています。
2001年に保育園で起きた集団感染では、
その保育園で行われた餅つき大会でふるまわれた
「あん餅」から菌が検出されました。
餅を食べた441人中349人が
嘔吐などの症状を訴えるという、すさまじい感染力です。
セレウス菌は、食品中で芽胞を作るため熱に強く、
また、増殖した時に生成される毒素の中にも
熱に強いものがあります。
この集団食中毒では、
茹でた小豆を長時間室温で放置したために、
菌が増殖してしまったのでした。
「下痢型」と「嘔吐型」の2種類の毒素を持つ
セレウス菌は、増殖に伴って2種類の毒素を作ります。
1つは「下痢型毒素」で、
食後6時間から15時間で水様の下痢や腹痛など、
ウエルシュ菌での食中毒に似た症状を起こします。
肉・魚・野菜・牛乳など様々な食品が
原因となりやすいのですが、比較的熱には弱く、
加熱で防ぐことができます。
もう1つは「嘔吐型毒素」で、
日本で見られるセレウス菌の食中毒は
ほとんどがこちらのタイプです。
多くは米や、芋・麺類など
デンプンを含む食品に関係します。
こちらは熱に強く、126℃90分加熱でも
安定しているほど壊れにくいため、注意が必要です。
食後30分~6時間で吐き気や嘔吐を発症し、
通常は2時間程度でおさまります。
黄色ブドウ球菌による食中毒と症状が似ています。
抗生物質治療が有効ですが、
脱水などに対応する点滴を行うことで
短時間内に回復することが多く、
あまり抗生物質は使用されません。
特に穀類を使った料理の保存には注意
健康な成人の10%は、
腸内にセレウス菌がいるといわれています。
また通常は、発症するためには食品1gあたり
100万個以上の菌が必要です。
しかし、免疫力が衰えている人や、
菌が大量に増殖した食品を口にした人は
発症してしまいますので、野菜・果物などの洗浄や
調理済み食品の保存には細心の注意を要します。
特に、白米・焼き飯や焼きそば、スパゲッティなどは
大量に作って常温で保存するようなことは避けます。
保存する場合は、なるべく小分けにして
速やかに10℃以下の低温保存をしましょう。