大動脈弁が石灰化する大動脈弁狭窄症。昨年から新しい治療法が保険適用になっています。
大動脈弁狭窄症とは?
人間の心臓は、右心房・左心房・右心室・左心室の
4つの部屋に分かれています。
全身から帰ってきた血液は右心房に入り、
右心室から肺へ流れて、酸素交換を行います。
酸素交換を終えて、
酸素をたっぷり含んだ血液は左心房に入り、
左心室から全身へと送り出されるのです。
全身へ血液を送り出すにはパワーが必要ですよね。
そのため、左心室の壁は厚い筋肉で覆われていて、
左心室の出口には血液の逆流を防ぐための弁が付いています。
この弁が大動脈弁です。
大動脈弁狭窄症とは、
この大動脈弁が硬く石灰化して狭窄してしまう病気です。
大動脈弁が狭窄することで、
左心室から十分な血液を送り出すことができなくなります。
さらに血液が左心室に停滞気味になることで、
左心室の内圧が上昇し、左心室壁が肥大してしまいます。
大動脈弁狭窄症の原因と症状
大動脈弁狭窄症の原因は、
先天性とリウマチ性と加齢変性の3つがありますが、
近年は加齢変性による大動脈弁狭窄症が増加しています。
加齢変性とは、その名前のとおり、
加齢が原因で大動脈弁が石灰化していくものですが、
近年ではこの加齢変性にメタボリックシンドロームが
関係していると言われています。
メタボリックシンドロームからの動脈硬化で、
大動脈弁が石灰化し、狭窄してしまうのです。
大動脈弁狭窄症の症状は、
左心室から十分な血液が送り出せないことによる
大動脈圧低下によるものと、
左心室内に血液が停滞することで起こる
左心不全によるものに分けられます。
大動脈圧が低下すると、脳への血流が少なくなり、
脳が酸素不足に陥りますので、失神することがあります。
また、何とか十分な血液量を送り出そうとして、
左心室壁が肥大することで
狭心症のような胸の痛み(狭心痛)も起こります。
左心不全が起こると、
左心室や左心房に血液が停滞しやすくなります。
そうすると、肺から酸素交換を終えた血液が心臓に戻れず、
肺周辺に溜まりやすくなりますので、
呼吸困難や肺水腫などが出てきます。
体への負担が少ない新しい治療法
大動脈弁狭窄症の治療は、中等症以下の場合は
定期的な検査と薬物療法が行われますが、
失神するなど重症化している場合は、
従来は開胸して人工的な弁を取り付ける
大動脈弁置換術が行われていました。
ただ、この手術は開胸しますので、体への負担が大きく、
高齢者や合併症がある場合は不適応でした。
大動脈弁置換術が不適応の患者さんは、
失神や呼吸困難などの症状に悩みながら、
ただ死を待つしかなかったのです。
そんな中、去年の10月から
TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)という
新しい治療法が保険適用となりました。
TAVIは足の付け根からカテーテルを心臓まで入れて、
新しい大動脈弁を取り付ける治療法ですので、
開胸手術の必要がなく、
体への負担が少なくて済むというメリットがあります。
この治療法が導入されて以降、
高齢者や合併症がある大動脈弁狭窄症の重症患者も
治療することができるようになりました。
まだ全国で25施設しか行っていない治療法ですが、
医療は日々進歩しているんですね。