抗生物質が効かなくなる!?世界中で耐性菌感染が拡大中。耐性菌について知りましょう。
耐性菌感染が拡大中
何らかの菌に感染した場合、
治療には感染の原因である菌を殺す
抗生物質を用いるのが一般的です。
抗生物質があるから、
感染症にかかってもすぐに治すことができるのです。
でも近い将来、
抗生物質が効かなくなる時代が来るかもしれません。
世界保健機関(WHO)は、
主要な抗生物質が効かず治療が困難な耐性菌の感染が、
世界のすべての地域で広がっていることを発表し、
国際社会が一致して対策をとる必要があるとの見解を
示しました。
黄色ブドウ球菌は
通常メチシリンという抗生物質が有効ですが、
南北アメリカやアフリカでは80~90%が効かず、
肺炎桿菌ではアフリカを中心に50%が
抗生物質が効かないケースが報告されています。
このまま抗生物質に耐性を持つ菌が増加すれば、
現在では重症化せずに簡単に治る感染症が
致死率の高い感染症になる日が来る可能性があります。
耐性菌とは?
感染症を引き起こす菌は1種類だけではありません。
また、抗生物質も1種類だけではありません。
抗生物質はすべての菌に有効というわけではなく、
菌ごとに有効な抗生物質が決まっています。
Aという菌に抗生物質Bが有効でも、
抗生物質BはCという菌に全く効かないこともあります。
つまり、感染症が疑われた場合、
どのような菌が原因かをしっかり検査してから
抗生物質を投与しないと意味がありません。
ただ、菌は生物ですので、
進化のために突然変異を起こすことがあります。
突然変異を起こした結果、
今まで有効だった抗生物質が効かなくなる、
つまり抗生物質に対して
耐性を持つこと(耐性獲得)があります。
これが耐性菌です。
耐性菌の中には、1種類の抗生物質だけでなく、
複数の抗生物質に耐性を持つものがあります。
このような耐性菌を多剤耐性菌と呼んでいます。
この多剤耐性菌は、院内感染を引き起こすことで、
しばしばニュースにも取り上げられてます。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や
多剤耐性緑膿菌という言葉を
聞いたことがあるかもしれません。
これらは院内感染の原因となる代表的な多剤耐性菌です。
さらに、2010年にはインドやパキスタンで
「NDM-1」という多剤耐性菌が検出され、
すでに世界各国に広がっています。
このNDM-1は現在ある抗生物質がほとんど効かず、
有効な治療手段がない耐性菌です。
このような耐性菌が増加することで、
感染症による死者が増えることが懸念されています。
耐性菌を作らないために
WHOが述べているように、耐性菌対策のためには
国際社会が一致して対策を取っていかなければいけませんが、
それだけでなく私たち一人ひとりが、
耐性菌を作らないために注意しなくてはいけません。
具体的な対策としては、
医師に抗生物質を処方してもらった時は、
医師の指示通りにしっかり飲みきることです。
途中で症状が改善したからといって、
自己判断で飲むのを止めてしまったり、
飲む回数や量を減らしたりすると、
菌耐性を獲得しやすくなってしまいます。
また、以前処方された抗生物質が余っていたからといって、
風邪を引いた時などに自己判断で飲むことも止めましょう。
一人ひとりの注意が耐性菌対策へとつながります。
抗生物質が効かなくなる事態を避けるためにも、
処方された薬は用法・用量をきちんと守って
服用するようにしましょう。