原発事故による健康被害の状況を、もう一度確認しておきましょう。
放射能による健康被害は?
2011年3月に福島県で
東京電力福島第一原発事故が起こってから、
日本では放射能による健康被害に関心が集まっています。
でも、実際に放射能による健康被害は、
どんなものがあるのかわからないことも多いですよね。
これは、私たちが情報不足だからというわけではなく、
放射能による健康被害の事例が少ないため、
専門家の間でもまだ不透明な部分が大きいんです。
過去、広島と長崎の原爆、チェルノブイリの原発事故、
そして福島の原発事故しか大規模な事例がないですし、
それぞれ状況や放射能の量などが違うため、
なかなか根拠のあるデータがないのです。
間違った情報は、大きな誤解を招き、
風評被害の原因になって、
健康被害以上のマイナスをもたらすかもしれませんので、
現時点でわかっていること、判明していることを中心に、
もう一度放射能による健康被害の状況を確認しましょう。
福島の先天異常率は全国と変わらない
放射能による健康被害で心配されるのは、
生まれてくる子供に奇形など先天性異常が起こるのではないか?
ということです。
厚生労働省研究班が、
1997年~2010年に全国で生まれた赤ちゃん約122万人と、
福島県内で2011~2013年に生まれた約1万7800人について
調査したところ、心室中角欠損やダウン症、
口唇口蓋裂などの全ての先天異常の発症率が、
全国で生まれた赤ちゃんと福島県で生まれた赤ちゃんの間には
統計的に意味のある差がなかったことがわかりました。
放射能と先天性異常の関係は、
まだまだ明らかになっていません。
WHOは、チェルノブイリの原発事故で
先天性異常は増えていないという報告書をまとめていますが、
アメリカの小児科学会では、
一部の異常が増えたと発表されています。
ただ、現在の福島県では、原発事故前の全国平均と比べても
先天性異常の増加は特に見られないということですね。
がんの増加への影響は少ない?
では、がんについてはどうでしょう?
被曝すると、
白血病などのがんになりやすいと言われていますよね。
2014年4月に国連放射線影響科学委員会は、
福島第一原発での放射能によるがん発症率への影響は小さく、
子供の白血病や将来的な乳がん、
妊婦の流産や出生後の小児がんも
明らかな増加は予想されないと結論付けています。
子供は大人に比べて放射線の感受性が高く、
放射能の影響を受けやすいのですが、
小児がんの明らかな増加はないとのことですので、
大人も原発事故でのがんの増加はないと考えて良いでしょう。
子供の甲状腺がんはどうなる?
上記の国連放射線影響科学委員会は、
「小児がんの明らかな増加は予想されない」としていますが、
やっぱり子供の甲状腺がんは気になりますよね。
チェルノブイリでは、
実際に子供の甲状腺がんが増加したという報告があります。
同じ原発事故なんだから、チェルノブイリで増加するなら、
福島でも増加するはずと思うかもしれません。
でも、チェルノブイリと福島では
決定的に違う点があります。
チェルノブイリでは、放射能に汚染された
食べ物や飲み物を一切規制しませんでした。
そして、そのことが内部被曝を引き起こし、
甲状腺がんの増加につながったことがわかっています。
でも、福島では事故直後に食べ物や飲み物、
水に「暫定基準値」を設けて、その基準値を超えるものは、
出荷制限・摂取制限をかけましたよね。
そのため、甲状腺がんを発症するほどの
内部被曝はしていないという見解なんです。
ただ、原発事故により通常以上の放射線を
浴びてしまったことは事実ですので、
今後も定期的な健康診断などをしていく必要があります。