遺伝による小頭症が遺伝子治療で回復可能?小頭症と遺伝子治療について知りましょう。
小頭症ってどんな病気?
小頭症とは、脳の発育状態が悪く、頭が小さいままで、
赤ちゃんの成長に見合った大きさにならない病気です。
脳が正常に発育しないため、
身体的発育や知的発育に遅れが生じることがあります。
小頭症は、脳の状態によって症状には個人差がありますが、
典型的な症状として、頭が外観的に小さい、
精神遅滞、身体的・知的発育の遅れ、腕や脚の動きの増加、
食欲不振などです。
身体的な発育は(ハイハイやつかまり立ちができる等)
遅れが見られますが、
体の大きさ自体は健常児と同様のスピードで
発育することも珍しくありません。
これは、体の発育は成長ホルモンで大きくなるのに対し、
脳は神経細胞同士のつながりによって
大きくなるという成長のメカニズムが違うためです。
小頭症の原因は、
妊娠中のサイトメガロウイルスや風疹などへの感染、
メチル水銀中毒、薬剤やアルコール、
有害化学物質の摂取、出産時の重症仮死などのほかに、
遺伝が原因の場合もあります。
小頭症の治療は、現在のところ根本的な治療法はなく、
早期に小頭症であることを発見しで、
持っている能力を最大限に伸ばしつつ、
デメリットを小さくして、
日常生活をスムーズに送ることができるような
療育をしていくことになります。
遺伝的な小頭症治療に光が?
小頭症の中でも遺伝が原因のものは、
3~5万人に1人の割合で生じますが、
この遺伝による小頭症が治療できるようになるかもしれません。
東京医科歯科大学と
ドイツのマックスプランク研究所などによる共同研究チームは
遺伝的な小頭症のメカニズムを
マウスを使った実験で解明しただけでなく、
小頭症のマウスを遺伝子治療によって、
脳のサイズや知能を一部回復させることに成功したそうです。
この研究は、人為的に小頭症の原因となる遺伝子を
欠損させた胎児期のマウスに、
細胞分裂に影響を与えるタンパク質を補充し、
さらに母体に小頭症の原因となる遺伝子を
注射して補充したところ、生まれた後の小頭症のマウスは、
脳のサイズが部分的に回復しただけでなく、
学習能力も改善したということです。
この研究がさらに進めば、人間でも遺伝が原因の小頭症は、
胎児期に治療を始めることで、
回復できるようになるかもしれませんね。
遺伝子治療って何?
この小頭症の研究は、遺伝子治療が鍵となっています。
最近、よく「遺伝子治療」という言葉を耳にしますよね。
遺伝子治療ってどんな治療なのでしょうか?
遺伝子治療とは、遺伝子や遺伝子を導入した細胞を
患者さんに投与することで、
病気の治療を行う治療法のことです。
ちょっと難しいですね。
小頭症治療の研究では、
欠損すると小頭症の原因となる遺伝子を
母体に注射して補充して治療しています。
また、がんの遺伝子治療は、
がん抑制遺伝子を投与することで、
がん細胞だけを死滅させていく治療法です。
ノーベル賞を受賞したことで注目されているiPS細胞も、
遺伝子治療のひとつで、今後の研究・開発で、
いろいろな病気の治療法が大きく変化し、
進歩していくことが期待されています。