マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群は、日本全国で感染する可能性があります。
重症熱性血小板減少症候群とは?
重症熱性血小板症候群(SFTS)という病気を
聞いたことはありますか?
漢字だらけの長い病名なので
難しく感じてしまうかもしれませんが、
「マダニウイルスによる病気」というと
知っている方も多いと思います。
重症熱性血小板減少症候群は、英語で
Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome
と言いますので、略してSFTSと呼ばれています。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、
新しいウイルス(SFTSウイルス)が原因の病気で
感染症の一種です。
マダニが媒介して感染しますので、
「マダニウイルス」とも呼ばれています。
SFTSは、SFTSウイルスに汚染されたマダニに咬まれて、
体内にウイルスが侵入すると感染を起こし、
6日~2週間の潜伏期間を経た後に発症します。
原因不明の発熱や下痢や嘔吐、
腹痛などの消化器症状が主な症状ですが、
失語や意識混濁などの神経症状、リンパ節の腫脹、
皮下出血や消化管出血などを起こします。
現在のところ、
ワクチンや有効な治療法は確立されておらず、
症状に対して治療を行う対症療法のみです。
2013年1月に日本国内で初めてSFTSの患者が確認されて以降
2014年2月時点で52人の患者が確認されていて、
そのうち21人が死亡しており、
致死率は40%と非常に高くなっています。
日本全国にSFTSウイルスは生息
現時点で、SFTS患者は日本で52人が確認されていますが、
この52人は兵庫県や四国、中国地方、九州と
全て西日本での感染が報告されています。
このデータを見ると、
SFTSウイルスは西日本にのみ生息しているのでは?
と推測できますが、実は日本全国に生息しているのです。
国立感染症研究所のこれまでの調査では、
患者が確認された西日本以外でも
和歌山県、静岡県、福井県、山梨県の4県で
SFTSウイルスの生息が確認されていましたが、
今回の調査でこの4県以外にも京都府や関東地方、
東北地方での生息が確認されています。
つまり、今までSFTSの感染者が
西日本のみで確認されていたのは単なる偶然であり、
日本全国でSFTSウイルスに感染する可能性が
あるということです。
しかも、SFTSウイルスを媒介するマダニは、
春から秋にかけて活動が活発になりますし、
マダニが生息する屋外で
レジャーを楽しむ機会も増えますので、
春以降はSFTSの感染者が増加するかもしれません。
SFTS予防には忌避剤を
SFTSを予防するためには、
マダニに咬まれないようにするしかありません。
マダニに咬まれないためには、
マダニが生息しているような草むらや藪、
森林などに行かないようにすることや
長袖長ズボンを着用し、
できるだけ肌の露出を控えるなどの対策が必要です。
また、最近の研究結果でディート(DEET)
という忌避剤(虫除け剤)の成分が
マダニに有効であることがわかりました。
ディートは、
ツツガムシ用の虫除け剤として市販されています。
このディートが入った忌避剤を使用することで、
マダニに咬まれるリスクは減少します。
ただ、あくまで「リスクが減少する」のみで、
完全にマダニに咬まれなくなるわけではありませんので、
ほかの予防策もしっかり行いつつ、
補助的な意味で忌避剤を使用するようにしましょう。