「アナフィラキシーショック」毎年死者を出している食物アレルギー。少しの油断が命を奪う。
頻発する食品アレルギーに関する事故
給食で出されたチヂミで、チーズアレルギーを持つ児童が
死亡したというニュースが世間を騒がせました。
死に至らないまでも、学校給食の現場や家庭などで、
食物アレルギーによる事故は日常的に起きています。
学校給食については、自治体でも指導を徹底し、どの学校でも
対応マニュアルを作成して、二重三重のチェックのもと、
アレルゲンとなる食品を取り除いた除去食を提供するように
していますが、それでも冒頭の死亡事故は起こりました。
担任がおかわり不可の除去食一覧表を確認しなかった、
親も女児本人が食べてはいけない献立を確認するための
献立票にチェックを入れていなかったという、
ヒューマンエラーが重なり、不幸な事故につながってしまったのです。
一刻を争うアナフィラキシーショックへの対応
この事故では、女児が気分の悪さを訴えてからの対応も
問題になりました。
女児は、アナフィラキシーショックを抑えるための注射薬
「エピペン」を持参していました。
この注射は、症状が出たらなるべく早く投与して救急車の到着を
待つのが正しい対応です。
しかし、本来患者自身が打つ注射を女児が打たず、どうするか
尋ねた担任も「打たないで」と答えられたことでためらってしまい、
実際に注射するまでに10分以上を要してしまいました。
アナフィラキシーショックの症状は、急激に現れるのが特徴です。
口唇や手足のしびれ、不快感を訴え、嘔吐、下痢、腹痛、発疹、
呼吸困難などの複数の症状が現れてショック状態に陥り、
血圧が低下したり、意識障害を起こしたりします。
最初の症状は軽微であっても、一気に重篤な状態に進展しやすいので、
対応にためらいは禁物です。
アレルゲンは少量でも命取りに
家庭内で慎重にアレルギー対策を行っていても、たとえば久しぶりに
孫に会った祖父母が、喜ぶ顔見たさにアレルゲンの含まれた
お菓子などを与えてしまうことがあります。
また、アレルギー対応をしているようなレストランでも、
調理器具にほんの少しアレルゲンが残っているだけで、
患者を危険にさらしてしまうことがあります。
アナフィラキシー症状を起こすようなアレルギーに、
「これぐらいなら大丈夫」はありません。
特に、小さな子供には本人が完全に理解させることは難しく、
親が注意すると同時に、周囲への深い理解を求める他ありません。
食べるのを我慢させるなんて可哀想という無責任な声や、
いまだにわがままや好き嫌いと混同しているような誤った認識と
闘っていくのは大変なことです。
学校や自治体で、身内にアレルギー患者のいない人にも
広く啓発を行うことが望まれます。