80歳以上の男性の多くが悩まされている前立腺肥大症について知りましょう。
前立腺肥大症とは?
前立腺は男性特有の臓器で、
膀胱の下部で尿道を取り囲むようにして存在しています。
クルミ大の大きさで、
前立腺液は精液の構成成分ですので、
男性の生殖器官のひとつとなっています。
加齢と共に生殖能力は低下していくため、
生殖器官である前立腺は萎縮または肥大していきます。
加齢と共に前立腺が肥大した状態が前立腺肥大症です。
前立腺肥大症は、加齢が関係していますので、
40歳以降に発症する病気で、
20~30代の若年層ではほとんど見られません。
前立腺肥大症の発症の頻度は人種によって異なり、
黒人、白人、アジア人の順に頻度が高くなっていますので、
アジア人である日本人は比較的発症頻度は低く、
1960年代頃までは日本人は前立腺が肥大せず
萎縮する人が多かったのですが、食生活の欧米化に伴い、
現在では肥大する人が増加してきています。
現在の日本人は60歳代で約50%が、
80歳代になると80%以上の人が、
前立腺が肥大していると言われています。
前立腺肥大症の症状
では、前立腺が肥大するとどうなるのでしょう?
前立腺は尿道をぐるっと取り囲んでいる臓器ですので、
その前立腺が肥大すれば、尿道を圧迫することになります。
尿道が圧迫されれば、膀胱から尿が出にくくなったり、
残尿感があるなど排尿障害が現れます。
前立腺肥大症の進行は第1病期から第3病期に分けられます。
第1病期は、膀胱刺激期と呼ばれていて、
頻尿や尿が我慢できない尿意切迫感、排尿時間が長くなる、
排尿の勢いがなくなるなどの症状が現れます。
第2病期は残尿発生期です。前立腺の肥大が進むことで、
尿道がさらに圧迫されて、膀胱内の尿がすべて排泄できず、
膀胱内に残ってしまう状態になります。
膀胱内に尿が貯留し続けることで、
第1期の症状が悪化するだけでなく、
細菌感染や結石が生じやすくなってしまいます。
第3期は完全尿閉期です。
前立腺がさらに大きくなることで、
膀胱の収縮力だけでは尿を排泄できなくなってしまい、
膀胱内に常時300~400ml以上もの尿が
貯留している状態です。
こうなると、尿漏れが起こりますし、
腎臓からの尿の流入が妨げられることから
腎障害が起こることもあります。
前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療は、
主に薬物治療と外科的治療の2通りに分けられます。
薬物治療でよく使われるのはα1遮断薬です。
α1遮断薬は、交感神経の働きを抑制して、
前立腺周囲の筋肉を弛緩させることで
排尿を促す働きがあります。
このほかに、前立腺を萎縮させる目的で
抗男性ホルモン剤を用いることもあります。
前立腺肥大症の薬物治療はどんどん進化していて、
抗コリン薬やED治療薬も前立腺肥大症に有効と判明したため
治療に用いられるようになっています。
薬物治療で効果が現れない場合、レーザー治療や内視鏡手術、
開腹手術など外科的治療が行われます。
尿が出にくい、残尿感がある等
前立腺肥大症が疑われる症状を感じたら、
早めに専門医を受診して、
早期から治療を始めるようにしましょう。