脳性まひを補償する産科医療補償制度。補償制度の内容と背景とは?
産科医療補償制度とは
産科医療補償制度を知っていますか?
産科医療補償制度とは、2009年1月1日からスタートした制度で
正常な分娩で生まれた赤ちゃんが重度の
脳性まひと診断された場合、
看護や介護に必要な補償金3000万円が支給され、
第三者機関の専門家チームが、
脳性まひとなった原因を分析する制度です。
これは、出産施設が加入する制度ですので、
この制度に加入している病院やクリニックで出産すれば、
自動的にこの制度を利用できることになります。
現在では、この産科医療補償制度に加入している出産施設は、
99%以上です。
この制度を利用できる条件は、
制度に加入している施設で出産することと、
生まれた赤ちゃんが重度の脳性まひ
(身体障害者等級1級、2級)と診断されること、
33週以降に2000g以上で生まれたことの3つです。
脳性まひとその原因
脳性まひとは、胎児から生後4週までに、
何らかの原因で脳にダメージが起こったことによって、
上肢や下肢に運動障害(麻痺)が生じる病気です。
合併症として、精神発達障害や視覚障害、
聴覚障害などを生じることもあります。
脳性まひは、軽症のものも含めると、
確率は5000分の1と言われています。
脳性まひの原因には、胎児期の脳の形成異常や脳出血、
虚血性脳障害や周産期の新生児仮死や核黄疸などが
挙げられますが、
原因不明のこともまだまだ多いのが現状です。
また、医療では防げなかったり、
医師側に過失がないことも多く、アメリカの統計によると
脳性まひの7~8割は医療では防ぐことができないそうです。
産科医療補償制度ができた背景
なぜ、産科医療補償制度ができたのでしょう?
この産科医療補償制度ができたのは、
医療訴訟が増えたことが背景にあります。
昔は、出産というと命がけのことで、
母体にも赤ちゃんにも相応のリスクがあったのですが、
医療の発達により、日本では出産は安全に行うことができ
「母子共に健康」であることが当たり前になりました。
しかし、どんなに医療が発達しても、
出産にはリスクが伴うものです。
それでも、「母子共に健康」であることが当然という認識が
広がっているため、出産時何か問題が起こった時に、
医療訴訟へと発展することが多くなりました。
「なぜ出産時に問題が起こったのか」、
「何か医療過誤はなかったのか」
を原因究明することは必要なことです。
赤ちゃんの両親も、「なぜ脳性まひがあるのか」を
知りたいと思うことは当然のことでしょう。
産科医療補償制度ができたことによって、
重度の脳性まひと診断された場合は、
専門家チームがその原因を分析するため、
医療訴訟を減少させることができます。
現在、日本では出産施設がどんどん減少しています。
これは、少子化問題もありますが、
医療訴訟に発展しやすいため、
医師側が敬遠しているためでもあります。
脳性まひがある赤ちゃんやその両親にとっては、
介護や看護に必要な補償金が支給され、
医療訴訟を起こさなくても原因究明ができますし、
医師側にとっては医療機関側に過失がない場合の
医療訴訟が減少するため、産科医療補償制度は、
患者側と医療者側のどちらにもメリットがある制度と
言えるでしょう。