ヘッドバンギングで頭の中に出血が?慢性硬膜下血腫について知りましょう。
ロックコンサートで慢性硬膜下血腫に!
ヘビーメタル好きのドイツ人の男性が、
ロックバンドのコンサートで音に合わせて激しく頭を上下に振る
「ヘッドバンギング」をしたところ、
コンサートの約2週間後から頭痛が生じ、
どんどん激しくなっていったため、
ドイツのハノーファー医大を受診しました。
CT検査を行ったところ、男性の右側頭部に
慢性硬膜下血腫が発見されて手術を行い、
2ヵ月後の検査では異常なしの結果が出て、
無事回復しています。
このドイツ人男性は50代ですが、
慢性硬膜下血腫が発見されたこと以外は健康で、
頭部の既往歴もなく、薬物乱用の経験もありませんでした。
また、ヘッドバンギング以外に
慢性硬膜下血腫が生じる原因は思い当たらず、
ヘッドバンギングで脳細胞に強い加速と減速を加えたために、
脳の毛細血管が破裂したのではないかと推測されています。
ヘッドバンギングは、以前から
むち打ち症や頚椎損傷のリスクがあると言われてきましたが
慢性硬膜下血腫の原因となることが判明したのは
今回が初めてです。
慢性硬膜下血腫とは?
慢性硬膜下血腫とは、どんな病気でしょう?
脳は3つの膜で保護されています。
外側の頭蓋骨に近い部分から、
硬膜・くも膜・軟膜です。
軟膜は脳に張り付くようにして脳を守っています。
慢性硬膜下血腫とは硬膜の下、
つまり硬膜とくも膜の間に出血が生じ、
血腫になった状態のことです。
慢性硬膜下血腫の原因は、
頭をぶつけた等の軽い頭部外傷であることが多いのですが、
頭をぶつけた後すぐに慢性硬膜下血腫になるわけではなく、
頭をぶつけた数週間から2ヶ月後に症状が出始め、
徐々に悪化していくという特徴があります。
慢性硬膜下血腫の症状は、
頭痛や嘔気、片麻痺、意識障害、知能障害などです。
治療が遅れると、血腫が大きくなっていき、
脳を圧迫して脳圧が上がり、
脳ヘルニアになって死亡することもあります。
慢性硬膜下血腫の治療法
慢性硬膜下血腫の治療は、血腫が小さな場合には
経過観察していくだけの場合もありますが、
基本的には原因である血腫を取り除く必要があります。
血腫を取り除くには、
外科的な手術をしなくてはいけません。
頭の手術というと、大手術というイメージがありますが
慢性硬膜下血腫の手術は穿頭血腫除去術で、
頭蓋骨に1.5センチの穴を開け、
溜まった血腫を取り除きます。
この手術は局所麻酔で可能な手術ですので、
比較的簡単な手術と言えるでしょう。
早期にきちんとした治療を行えば、
慢性硬膜下血腫は後遺症も残らず、
予後が良い脳の疾患です。
疫学的にはアルコールをよく飲む高齢者の男性に多い
ということがわかっています。
慢性硬膜下血腫の原因が思い当たらなくても、
お酒が好きな男性高齢者は、頭痛が続いたり、
吐き気がするなどの症状が出たら、
早めに医療機関を受診して検査を受けましょう。