歯周病が肺炎を呼び起こすし早産のリスクに?全身病と呼ばれるその理由
成人の8割が罹患している歯周病
程度の差はあれ、なんらかの歯周病を有する割合は、成人で
約8割にも達するという報告があります。
初期段階では自覚症状も少なく、知らない間に進行し歯がグラ
ついてから初めて歯科医院に駆け込むことも多く、日本人が
歯を失うほとんどの原因が歯周病です。
80歳になっても自分の歯を20本以上保とうということで、
厚生労働省と日本歯科医師会が「8020(ハチマルニイマル)
運動」を推進していますが、それを実現できている人は4分の1
程度で、80歳の平均では8本強しか自前の歯が残っていないと
言う現実があります。
歯周病は細菌感染症であることを認識しよう
人間の口の中には500種類以上もの細菌が棲息し、そのうちの
約20種類が歯周病の発症に関連しています。
歯垢(プラーク)というのは、これらの細菌の集合体で、手入れの
不十分な口腔内で繁殖し、歯周組織をおびやかします。
歯周病は老化に伴う症状と考えられていたこともありますが、
加齢と共に唾液の分泌量が減少したり、免疫力が低下することで
細菌が繁殖しやすくなるのが、高齢者に歯周病患者が多く
見られる理由です。
初期段階では、歯肉に弾力がなくなり、腫れや出血が見られるように
なりますが、適切に対処すれば回復が期待できます。
しかし、強い毒性を持つ細菌が、歯を支えている歯槽骨を冒し始めると、
ほぼ再建は望みがたく、せめて隣り合わせの歯にまで悪影響を
及ぼさないように、抜歯するより他に選択肢がなくなります。
深刻な全身疾患につながる危険性も
歯周病が進行すると、深くなった歯周ポケットから歯周病菌が
体内に侵入したり、食道や気管を通じて体内に取り込まれたりして
様々な病気を引き起こすことが、1990年代後半に明らかになりました。
中でも深刻なのは高齢者の命を奪う『誤嚥性肺炎』です。
無意識のうちに肺に入った歯周病菌は、サイトカインと呼ばれる
特殊なタンパクを出します。
このタンパクが肺の表面で悪さをし、肺炎を起こす病原体に
感染しやすくなるよう作用するのです。他にも、サイトカインの
一種が、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害して糖尿病を悪化
させたり、血管内に侵入した歯周病菌が、心臓に血液を送る冠状動脈に
到達して心疾患を起こさせるなど、多くの病気のリスク因子と
なっています。
妊娠前に済ませておきたい歯周病の治療
妊婦の体内に、歯肉の血管から歯周病菌が入り込むと、早産の
リスクが非常に高まります。
歯周病のある妊婦から低体重児が生まれる確率は、歯周病のない
妊婦に比べ、4.3倍にも上ります。
妊婦の体内では、歯周病菌の生み出したサイトカインが子宮の
収縮を促し、早産を誘発してしまうのです。
妊娠中はホルモンの変化や免疫力の低下などで、歯周病の進行も
早まりがちです。
検査や使える薬が制限されてしまいますので、治療もままなりません。
妊娠前には積極的に検査・治療を受けておきたいものです。