期待が高まる、フランスからやってきた新しい認知症介護の技術「ユマニチュード」
魔法の介護?「ユマニチュード」とは
大好きな家族が認知症にかかり、
人が変わったように暴言を吐いたり暴れたりするのを見るのは
悲しいものです。
介護の現場でも、このような症状への対応は課題でした。
そんな認知症患者が「魔法にかかったように」穏やかになる
と話題の認知症ケアが、
フランス発の「ユマニチュード」です。
患者を人として尊重して接する
「ユマニチュード」ということばには、
「人として接する」という意味があります。
認知症の人が病院や介護施設などに
入院・入所して急に環境が一変すると、混乱が生じ、
大声を出したり暴れたりして治療や介護に
支障を及ぼす場合があります。
施設にもよりますが、このような時には身体を拘束したり
投薬して鎮静させたりします。
そのために家にいた時よりも
運動機能が低下して歩けなくなったり、
いつも薬のせいでぼんやりしているようになり、
そのまま寝たきりになってしまうことも少なくありません。
ユマニチュードはこのような方法をとらずに
患者を落ち着かせ、
治療や介護を受け入れる状態にさせようという
ケアの方法です。
簡単なようでできていなかった介護の基本
ユマニチュードの基本は、
「相手を見つめる」「話しかける」「触れる」
「自分で立てるよう支援する」という4点です。
当たり前のようで、
忙しい現場ではなかなか実現していないことです。
治療や介護の現場では、
どうしても患者が見下ろされる場面が多くなってしまい、
患者はその威圧感を敏感に感じ取ります。
ですから、患者の目線と同じ高さになって、
正面の至近距離から、
じっくりと時間をかけて見つめ親近感を伝えます。
また、ケアをされる時、
患者は自分が何をされるのか把握していないので、
いきなり腕を掴まれたり服をはだけられたりすれば、
怯えたり不愉快に感じたりするのも当然です。
常に、これから何のために何をするのか、
きちんと言葉にして丁寧に伝えることが大切です。
終了後も、こういうことをしたのでこんな効果がある、
とゆっくり説明します。
これだけで患者は安心し、落ち着きを取り戻すのです。
スタッフの心のケアにも
患者からの暴言や暴力は、
プロのスタッフであってもこたえるものです。
嫌がるのを無理に抑え込むような形でのケアに、
疑問を感じている人もいるでしょう。
この方法では、最初のコミュニケーションで
心を通じ合わせるのに時間を要しますが、
いったん良い関係が構築できれば、
その後のケアがやりやすくなります。
スタッフ側の心身の負担も軽減され、
発祥の地フランスでは、
スタッフの離職率が大きく低下したとの調査結果もあります。
家庭でももちろん取り入れることができます。
患者本人も家族も、
互いに心地よく過ごせる介護の第一歩として、
広く普及されることが望まれます。